Interview
#29

チャンスに飛び込み続け
育児絵日記で人気イラストレーターに
子どもたちと育む夢とは

横峰 沙弥香さんSAYAKA YOKOMINE

イラストレーター

1984年、長崎県出身。大学在籍時からモデル業を経験し、その後、九州のテレビ番組でリポーターを努め人気に。イラストレーターを目指し上京。息子が生まれたのを機にInstagramに投稿するようになった育児絵日記が話題に。以降、息子、娘との日常を描いた子育て漫画が人気を博している。著書に『まめ日記』『まめ日和』や、息子が原作者となった絵本『ちんちんぼうずのだいぼうけん』など。他、『CHANTO WEB』『FRaU web』でも連載中。
https://www.instagram.com/sayakayokomine

思わずくすりと笑ってしまうタッチで子どもたちの姿を描き、子育て中の出来事を面白おかしく発信するイラストレーター、横峰沙弥香さん。時にはイライラ、モヤモヤしてしまう子育ての心の支えになっている、というファンが多くいます。意外にも紆余曲折の人生を送ってきた彼女のお話を伺うと、そこには家族とのくらしを楽しむためのたくさんのポイントが。横峰さんが語る、仕事、パートナー、子どもとの向き合い方、そして、これからの夢とは?

転校が「リセット」だった
子ども時代

ずっと子どもたちの姿を描き続けてきた横峰さん。彼女自身はどんな子ども時代を送っていたのでしょうか?

「父が転勤族で、九州各地を転々としていました。私は友達を作るのが苦手で、隅っこで絵を描いているばかり。でも、人に好かれなきゃいけない、という謎の思い込みがあって、みんなを笑わせようと無理しては滑って教室の隅に戻り……という行動を繰り返していました」

内気ながらもチャレンジし続けたのは、転校という「リセット」があったからだそう。絵を描くことはずっと好きだったため、福岡の大学の芸術学部に入学。しかし、在学中に芸能事務所からスカウトを受けてモデルの仕事をスタートさせたことが転機になりました。

「最初は軽い気持ちで、お仕事が来たタイミングで細々とモデルのお仕事をしていました。そしたら、素人がテレビ番組のリポーターをするという企画にいきなり採用されてしまって。でも、子どもの頃に感じた『人に好かれなきゃいけない』という思いがまた頭をもたげてきて、チャンスだと思いました」

横峰 沙弥香さんイメージ

落書きがバレて
イラストの仕事が……

番組に人気が出て収入も増え、リポーターの仕事に集中するため大学を中退。まるでこの後、有名イラストレーターになるとは思えない紆余曲折の人生です。

「とてもやりがいがあったんです。喋るのは苦手なんですけど頑張って、やがて他のテレビ局の仕事も増えていきました」

そして、九州では知らない人はいない老舗深夜番組のリポーターに抜擢されます。完成度の高い仕事が求められる現場では、大きなストレスにさらされました。
「もちろん楽しかったんですけど、すごく怒られる体育会系の番組でした。落ち込みながらずっと台本の隅に4コマ漫画を書いていたらそれがバレて……『絵が描けるならなんで言わないの』と」

すると、出演者の似顔絵を描いたものが番組のテロップに採用され、やがてフリーペーパーで連載の仕事も来るように。

「こういうことがやりたかったんだ!と、当時は楽しくて仕方ありませんでした。チャンスに乗っかり続けてリポーター半分、イラスト半分で仕事をしていました」

横峰 沙弥香さんイメージ
横峰 沙弥香さんイメージ

変化やチャンスには
飛び込む

しかし、20代後半になってキャリアに悩むようになります。

「将来的には大人向けの情報番組で温泉レポートとかやるのかな? それって私が本当にやりたかったことなのかな? って。かといって絵一本で勝負する自信もない。一回全部捨てて身軽にならないと何も見えない、というくらい煮詰まっていました」

結局、周囲の反対を押し切って上京。縁もゆかりも無い土地で心機一転、新しいスタートを切ります。思い切った決断ですが、不安はなかったのでしょうか?

「すごく開放感があって、なんでもできると思いました。私にとって、住む場所を変えるっていうことが、一番わかりやすい決意表明であり、リセットの方法なんですよね。子ども時代の転校と一緒。貯金がどんどんなくなっていく不安はありましたが、自分一人食べさせていくことくらい絶対できるだろうと」

そして横峰さんの人生にまたしても訪れた転機が、現在の夫との出会いと第一子の出産。

「しばらく経済面は夫に任せて、自分は子育てを楽しもうと思いました。それまで子育てに興味があったわけじゃないのに、子どもができたという変化が楽しみで仕方ありませんでした。変化やチャンスに飛び込むことが、私は怖くない性格なのかもしれません」

横峰 沙弥香さんイメージ

子どもを描いて気づいた
成功の秘訣

とはいえ楽しい気持ちだけで乗り切れないのが子育て。産後間も無くワンオペ育児で疲弊してしまいますが、その時、孤独感を解消する助けになってくれたのがInstagramに絵日記を投稿することでした。

横峰さんのイラストは、子どもたちの面白おかしい言動をとらえ、親がツッコミを入れる微笑ましい描写が魅力。なかなか思うようにいかず、辛いこともある子育てですが、横峰さんのように楽しむ姿勢を持つにはどうすればいいのでしょうか。

「最初は私にとっても訓練でした。でも、毎日どんなに辛くても、何か一個でいいから面白いことを絵日記にしてみようと続けていました。昨日は本当に辛かったけど、息子のお尻からエノキが出てきたことだけは面白かった、とか(笑)」
描き続けていくうちに人気が広がり、名指しで仕事が舞い込むように。ついにイラストレーター・〝よこみねさやか〟が誕生します。

「感動しました。アルバイトを含めいろんなお仕事を経験して、どれもやりがいがありましたが、あの喜びは格別。私、ずっと『人に好かれなきゃいけない』と、人が好きそうなものを描こうとしてたからだめだったんです。子どもが生まれてから毎日描きたくてしょうがなくて、だから人が共感してくれた。自分が描きたいものを書き続けるしか、成功する道はなかったんです」

横峰 沙弥香さんイメージ
横峰 沙弥香さんイメージ

家族とくらす
喜びの先に

子育てに追われ、多忙な日々を送る横峰さん。絵を描く時間を捻出するのにも苦労しますが、それでも、子どもたちというイラストの題材に囲まれ、ネタに困ることはありません。

「仕事とプライベートの切り替えはできませんが、それはストレスではなく、生きていることが仕事、みたいな。今、夫と子どもたちと協力しあって、助け合ってくらすサイクルがうまく回るようになったところ。家族であることを続けていくことそのものが、くらしの喜びなのかもしれません」

家族で協力し合う体制を作ることができたのは、フリーランスの編集者である夫と会社を立ち上げたのがきっかけだったそう。
「家族は社員に、お金の流れは家計ではなく経理になりました。夫婦喧嘩をすると業績に影響するからイライラしてられない(笑)。息子も、絵本の原作やメディア出演といった仕事をしてくれているので、お給料を払っています」

そんな横峰さんがこれからチャレンジしたいのは、子どもたちとの共同作業で作品を作っていくことだそう。

「自分の子どもを描き続けるのはいつか限界が来ること。今、自分の子どもだけでなく、子どもという存在そのものに興味が湧いています。息子や娘の友達と接していて思うのですが、どんな子もすごく個性的で面白い。やってみたいのはワークショップです。子どもたちと漫画や絵本を描いたり、みんなの創造性を生かして作品を一緒に作っていくということに挑戦してみたいですね」

横峰 沙弥香さんイメージ
横峰 沙弥香さんイメージ
横峰 沙弥香さんイメージ
KAZUSHIGE MIYAKE Everything Has A Story