Interview
#24

環境問題や食のシフト
変化と向き合うレザー作家
見据える未来のものづくりとは

TOMY(トミー)さんTOMY

レザー作家

1986年、秋田県出身。高校時代まで野球に親しみ、強豪校でピッチャーを務める。大学時代から独学でレザー作品を作るようになり、卒業と共に大阪のレザー工房に就職。その後、OEM商品の生産を受託する企業を経て、革職人として10年経験を積み、2017年に自身のブランド「TOMYMADE」で独立。アート作品も手掛けるほか、2021年には「mawaru made」をスタートさせ、ヴィンテージの服や小物とレザーの端材を組み合わせたリメイクのアイテムを発表している。
https://tomymade.net/

服や生活雑貨など、数々のアイテムに用いられているレザー。手に馴染む柔らかな質感や、経年変化を楽しめるのが大きな魅力です。近年、天然皮革の代替素材が注目を集めるようになっていますが、レザー作家のTOMYさんは、食品副産物としての革はサスティナブルな素材であるという確信のもと、ものづくりに向き合っています。生産背景に思いを馳せるTOMYさんのスタイルはどのように生まれたのでしょうか。今の仕事やくらしへと繋がる原風景を探ります。

野球少年が出会った
レザーの魅力

プロ野球選手を目指し、高校時代は強豪校でピッチャーを務めていたというTOMYさん。レザーとの出会いはグローブでした。

「小学生の時にグローブを買ってもらったんですが、最初は硬かったのが、大切にケアしながら使っていくと、どんどん自分の体に馴染んでいくのが良いな、と思って」

大学に入学すると、厳しい練習から解き放たれた喜びはあったものの、勉強、遊び、アルバイト、どれをとってもなかなか真剣に打ち込めなかったそう。

「『これは自分が本当にやりたいことじゃないし』と言い訳をする気持ちが芽生えてきたんです。野球に打ち込んでいた高校時代は気づきませんでしたが、好きなものが無くなれば自分はこんなにも空虚だったのかと気がついて。カッコ悪くて嫌だな、と思いました」

新しいモチベーションを探していた時、TOMYさんの琴線に触れたのが、ネイティブアメリカンのアクセサリーとレザーでした。

「アメリカの先住民が作るジュエリーが好きでした。シルバーに鉱物を組み合わせていたり、精巧な彫り物があったり、とにかくカッコよかった。でも僕はネイティブアメリカンじゃないから本物の作り手にはなれないし、じゃあ、選ぶとしたらレザーの道かな、と」

TOMY(トミー)さんイメージ

言い訳をしない人生を
選びたかった

レザー職人を目指し、西部開拓時代の伝統的な製法で生み出される商品が人気の、大阪にある工房に頻繁に電話をかけては、弟子入りのお願いをしていたそう。しかし、なかなかタイミングが合いませんでした。

ようやくその工房から採用試験実施の連絡が来たのは、大学を卒業する直前のこと。すでに全く別の業界の企業から内定をもらっていましたが、採用試験を受けることを決断します。結果は見事合格。

「『これは自分が本当にやりたいことじゃないし』という言い訳をする大人にはなりたくありませんでした。後悔しないように、思い切って飛び込んでしまおうと」
故郷の秋田から大阪に移り住み、レザー職人として修行の日々が始まります。いずれは独立、という気持ちを持ち続け、さらなる技術を磨くために、続いてOEM商品の生産を受託する企業へ。転職を契機に、「アメリカンなレザーの世界から離れる前に」と、大きく影響を受けたカウボーイとネイティブアメリカンの文化に触れるべくアメリカのアリゾナ、ニューメキシコに3週間滞在。先住民居留地で現地のアクセサリー作りを直に見る機会も得ます。

「自分が関わっているもののルーツを自分の目で一度も見たことがないということが、ある種、コンプレックスになって残り続けていたんだと思いました」

ただものを「作る」だけではなく、その素材や文化にも敬意を払うことを忘れないスタイルが伺えます。

TOMY(トミー)さんイメージ
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ものづくりに生きる、
故郷の原風景

生産背景に思いを馳せたものづくりへのこだわりは、故郷の秋田県での原体験も影響しているそう。

「実家は農家を営んでいて、牛小屋もあり、3歳くらいの時に牛の出産に立ち会ったことを覚えています。大量生産、大量廃棄といったものづくりの矛盾に目を瞑ることができないのは、自然豊かな場所で、動物たちに親しんで育ったからなのかもしれません」

職人時代に、たびたび素材の破棄を目の当たりにしてきたことに課題意識を持ち、2017年に独立した際は「サスティナブル」というテーマをブランドの大きな軸に据えました。

「正直、ブランドを立ち上げた時には、そこまで課題を言語化できていませんでした。今になって、子ども時代に経験したことや、昔考えていたことが繋がってきているのかなと思います」

最近では、亡くなった祖母が大事にしていた「正直は人生の宝」という言葉もよく思い出すそう。ものづくりの功罪に真摯に向き合うTOMYさんの来し方が見えるような格言です。

TOMY(トミー)さんイメージ
TOMY(トミー)さんイメージ
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持続可能で、
くらしに寄り添う革小物を

現在、ファッション業界ではSDGsの観点から、動物素材の使用を見直す動きが強まっています。しかし、食品産業からの「副産物」としてのレザーは、いただいた命を余すことなく使うという観点で意義がある、というのがTOMYさんの考え方。

「フェイクレザーは新しい物質を一から作ってしまっているし、破棄されても土に還りません。なめす前の原皮は土に還ります。それを使えるものにして利用する、というのは、持続可能な世界について考えた時の一つの正解なのかなと」

ブランド立ち上げ以降、財布やバッグ、バングル、お香立てなど、くらしの中に馴染むシンプルで上質な革小物を作り続けてきました。
「でも、どうしても端材が出てしまうことがある。実用的なプロダクトという視点だけでは素材を生かしきれないので、『アート』という尺度を取り入れてオブジェも作るようになりました」

2021年には有名ブランドとコラボレーションし、そのブランドの古着と端材のレザーを使ったオブジェは好評を博しました。

そして2022年、「MAWARUMADE」という取り組みもスタート。一生ものの高品質なレザー製品は、長く使っていただける分、お客様に新しい提案をする機会が限られてしまうのがネックでした。そこで考えたのが、古着にレザーを組み合わせたり、端材をつぎ合わせた帽子の裏地にヴィンテージのスカーフを用いたり、といったリメイクの手法によるアイテムの数々。新品の素材ではなく、この世に既に存在している様々なモノのストーリーをあらためて掬い上げ、新たな価値を生み出しています。

TOMY(トミー)さんイメージ

世代を超え、
未来を見据えたものづくり

実は、TOMYMADEを立ち上げたのは娘が誕生する時期でもありました。独立の決意の裏には、自らの仕事に疑問を持ちながら働いている姿を娘に見せたくなかった、という思いもあったそう。

家族との時間を大切にするため、仕事とプライベートをきっちり分けるのではなく、「自宅兼アトリエ」という形にこだわりました。

「アトリエで僕が作業をしていて、娘が少し離れたところでお絵描きや粘土遊びをしている、その時間がすごく好きです。ものづくりをする同志みたいな不思議な連帯感を覚えます」
娘が生きる未来に思いを馳せるTOMYさん。実は、環境保全や食のシフトなどの動きが加速する中で、レザー職人という仕事が将来的には無くなるだろう、とまで考えています。

「それは抗えないことだし、抗うべきでもない。でも、僕の娘やその子孫が後年僕の仕事を振り返った時に、僕がしていたことには意味があったんだと、納得してもらえる仕事を、今、しなきゃいけない。だからこれからもベストな道を考え続けます。娘にかっこいいと思ってもらいたい、僕はもう、それだけですね(笑)」

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KAZUSHIGE MIYAKE Everything Has A Story