Interview
#23

年齢・性別を超えて繋がる世界
ドローンの魅力を発信するため
パイロットが目指すもの

白石 麻衣さんMAI SHIRAISHI

日本代表ドローンレーサー

1981年、熊本県出身。ドローンレーサー、ドローンカメラマン、ドローン映像製作、ドローンイベントの企画運営、3DCGのデザイナー、ディレクター。2017年にドローンに出会い、空撮からレースへと関心を広げ、マイクロドローンコミュニティ「Wednesday Tokyo Whoopers(WTW)」を立ち上げる。毎週水曜日に都内近郊でイベントを開催。2018年11月に行われた第1回FAIドローンレース世界選手権(FAI 1st World Drone Racing Championship in Shenzhen)で日本代表チーム初の女性パイロットに選出。
https://www.instagram.com/namaikifpv/

トップスピードは時速150、160キロというFPV(First Person View / 一人称目線)ドローンレースの世界。パイロットはゴーグルをつけ、ドローンのカメラから転送される臨場感ある映像をリアルタイムで視認し、熱戦を繰り広げます。この世界に魅了され、未経験からたった1年で女性として初めて日本代表チームに選出されたのが白石麻衣さん。レースにかける想いや、レースを通じて生まれるコミュニティの魅力、ドローンとともにあるくらしについて伺いました。

映像を見てすぐに
「これがやりたい!」

もともと3DCGデザイナーとして、アニメ、映像業界で働いていた白石さん。最初にドローンに惹かれたのは「一人旅の思い出を残したかった」という理由からでした。

「世界中を旅行しているカップルが、自分達の姿を世界遺産の遠景と一緒に撮影しているドラマティックな映像を見て、やってみたいな、と思いました。映像業界にいたので、面白くて斬新な映像には興味があったんです」

まずは空撮の世界を入り口にドローンの操縦を始めたものの、あることに気づきます。

「結局これって、絶景に行ったもん勝ちだな、と(笑)。ちょうどそのタイミングで妊娠して、外に出かけられなくなったのですが、Instagramでレース用ドローンを飛ばしている映像を見つけました。それは、上下逆さまになったり、ダイブしたり、地面スレスレのところを100キロくらいで駆け抜けたりしていて。これまで見ていた空撮映像と全く違ってました」

アクションゲームが大好きだった、という白石さんはその映像に魅了され、「これがやりたい!」とすぐに思ったそう。

しかし、当時はドローンレースに関する情報は少ない上、その多くが英語で、リサーチは難航。そこで、仲間との情報交換や、屋内で小さなドローンを飛ばす練習ができるようコミュニティを立ち上げました。

白石 麻衣さんイメージ
白石 麻衣さんイメージ

練習を重ね
トップレーサーに

「ゲームを攻略したい、という感覚と一緒でした。この面をクリアしたい、みたいな。とにかく楽しくて練習に励みました」

FPVゴーグルをつけて飛ばすドローンの操縦には無線電波を利用するため、第4級アマチュア無線技士の免許取得が必要です(2022年3月現在)。白石さんはそれを取得すると、すぐ次の週にはレースに出場。

「後から知ったんですけど、海外のトップ選手が招待された、かなり大きなレースだったんです。結果はもちろん、全然ダメ。やっとゴールできたくらいでした」

しかし、家の中や近所の公園で地道な練習を続けていくうち、いつしか女性パイロットのパイオニアと呼ばれる存在に。2018年11月に開催された、第1回FAIドローンレース世界選手権では日本代表チーム初の女性パイロットに選出されました。

ドローンレースは基本的にはタイムアタック(スタート地点からゴールまでの時間による順位づけ)で、平均的な速度は時速100キロ。トップスピードでは時速150、160キロが出るといいます。障害物にクラッシュすると「ほぼ6割の確率で大破します」と白石さん。レース用に自ら機体を作ったり改良したりするだけでなく、このように壊れてしまった機体も自分で修理するのだとか。
「もともと理系でもないですし、はんだに触ったのも中学校の図工の時間以来。でも、必要に駆られて勉強してきました」

白石 麻衣さんイメージ
白石 麻衣さんイメージ

ドローン業界は
これからどうなる?

まだまだ過渡期のドローンの世界。国の法律も日進月歩で変わっています。国内のレースでは賞金制度が確立されておらず、少なくとも日本では、レースだけで生計を立てている人はいないそう。ただ、ドローンレーサーは高度な操縦技術を持っているため、空撮や、施設の点検などの領域でその腕前を発揮しています。

さらに近年は未来の日本を支える産業としてドローンへの注目が高まってきており、今後ますますレースの競技人口も増えるのでは、と白石さんは予想しています。

とはいえ、2015年、首相官邸にドローンが落下した事件の印象が未だ世間に根強く、発信を続けることで少しでもネガティブな先入観を払拭していきたいと考えています。

「例えば、F1には最高峰のエンジニアリングやマシンの技術が集結するので、それが結果的に量産車に応用されてくらしを支えている、ということがあります。同じように、ドローンレースも最先端の技術が集結する場所。それが産業全体を活性化させる、というサイクルができれば、もっと国内外でドローンレースは盛り上がると思います」

白石 麻衣さんイメージ
白石 麻衣さんイメージ
白石 麻衣さんイメージ

くらしの中でも
パイロット目線

ドローンカメラマンでもある白石さんは、テレビCMや観光PRなど様々な空撮の依頼を受けています。時には有名なアーティストのライブパフォーマンスや、由緒正しきお寺のお堂を飛んだりすることがあったとか。
「そういった珍しいチャンスをいただけるときはわくわくします。『こんなところ飛ばしていいの?』って」

また、日々のくらしや旅行に行った際などにも、自然と「この木の間飛ばせるな」と、気が付けばドローンパイロット目線になっているそう。

これまでドローンを飛ばした中で一番印象に残っている景色は、石垣島の浜島。満潮時には海底にあり、干潮時にしか姿を見せないという別名「幻の島」です。

「青い海が綺麗で、白いビーチがどこまでも広がっていました。本当に気持ちよかったですね。あの景色はドローンでしか見ることができません。自分の操縦で撮影できた景色を他の人にも見てほしい、ということも、私の中では大きなモチベーションになっています」

白石 麻衣さんイメージ

コミュニティの発展に
貢献したい

現在3歳の娘を育てる母親でもある白石さん。家の中で小さなマイクロドローンを飛ばす練習をすることもあるため、家族にとってもドローンは身近なものです。

「親子で飛ばせたらいいな、と思ってたんですけど、娘はドローンに慣れすぎてしまって、目の前でピタッと止めても今や無反応(笑)。興味を持ってもらうにはどうしたらいいだろうか、と画策しているところです」

また、白石さんは、レースそのものにとどまらないドローンレースの魅力についても教えてくれました。競技人口が少ないため、会場ではお馴染みのメンバーがよく顔を合わせ、小さなコミュニティ特有の温かさがあるとか。
「年齢や性別によるクラス分けがなく、下は10歳程度から上は70歳代まで、同じスタート地点から実力を競います。ここまでフラットなのって、他のスポーツにはなかなかないですよね。おじいちゃんともキッズとも友達で、キッズのお母さんとママ友です」

しかし、10代のレーサーの台頭が著しく、大人にとってはシビアな世界でもあります。そんな中、女性で、母親で、年齢も重ねている自分がパイロットとして活躍することで、人がドローンに触れるきっかけを少しでも増やすことができたら、と教えてくれました。

「ドローンの楽しい部分が広がって、パイロットの分母が増えれば業界も活性化するはず。私がレースをする姿を発信することで、ドローンの世界やコミュニティに貢献できたら嬉しいですね」

白石 麻衣さんイメージ
KAZUSHIGE MIYAKE Everything Has A Story