Interview
#13

〝無駄づくりクリエイター〟
大事なのは「暇な時間」の過ごしかた
ゆったり暮らせる今が幸せ
風が吹いても揺らがない自分でいたい

藤原 麻里菜さんMARINA FUJIWARA

発明家 コンテンツクリエイター
文筆家

1993年、神奈川県横浜市生まれ。「無駄づくり」として発明を行い、YouTubeで人気を得る。YouTube NextUp 2016入賞者。2019年度総務省「異能(Inno)vation」最終選考通過者。2021年、Forbesの「世界を変える30歳未満の30人」にも選出される。著作に『無駄なことを続けるために―ほどほどに暮らせる稼ぎ方―』『考える術──人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』『無駄なマシーンを発明しよう! ~独創性を育むはじめてのエンジニアリング』。
https://fujiwaram.com

「インスタ映え台無しマシーン」「オンライン飲み会緊急脱出マシーン」「謝罪メールパンチングマシーン」など、「無駄づくり」をテーマに200を超える発明品を手がけてきた、藤原麻里菜さん。有用性や価値を考えずに、一見「無駄」と思われるものを生み出すことに意義を感じているといいます。日常の中で私たちが見過ごしてしまいがちな感情や好奇心と向き合っている発明家。その発想には、豊かなくらしのためのアイディアがいくつも隠されていました。

自分の中に生まれた
感情と向き合う

「日々を過ごす中で、スルーしてしまいがちな自分の感情だったり、見なかったことにしてしまう状況などで、あえて立ち止まってみることを意識しています」

藤原さんは自身の発明について、そのように教えてくれました。例えば、「ツイッターで『バーベキュー』と呟かれる度に、藁人形に五寸釘が打ち付けられるデバイス」を作ったときには、「自分がぜんぜんバーベキューに誘われないのが寂しい」という感情があったそう。

「作った後にどうなるかというと、『悩むほどたいしたことじゃなかったな』と。こういう、もやもやした感情を具現化してあげることが無駄づくりの基本にはあるのかな、と思いますね」

感情とていねいに向き合っている様子が見る人にも伝わるのか、発明品の動画を公開しているYouTubeチャンネルには、「癒された」「ありがとう」というコメントが多く寄せられています。

「わりとドロドロした感情がきっかけになることが多いので、(コメントは)意外でした」

無駄づくり、という言葉だけ聞くとネガティブなイメージもありますが、藤原さんの発明はくらしを豊かにするエネルギーを秘めています。

藤原 麻里菜さんイメージ
藤原 麻里菜さんイメージ

好奇心で発明品が
どんどん進化

子どもの頃から、好奇心で動くことが多かったという藤原さん。

「いろんなことが三日坊主で終わっても、親は全く責めてきませんでした。人生のプラスになるかどうかはわからないけど、それでもいいじゃん、っていう考え方みたいです。ちなみに2022年のお正月、三日坊主の方のために『3ページしかない日記帳』を発表しました」

高校を卒業してからは「面白いことをする人になりたい」という夢を抱き、一時は芸人を目指して吉本総合芸能学院(NSC)を経てピン芸人として活動していたことも。

藤原さんが「無駄づくり」というアイディアに出会ったのは、芸人時代に「ピタゴラスイッチ」を作ってYouTubeにアップした時のことです。
「製作に1週間くらいかけたんですけど、自分が予想していたものと全く違う、しょぼいものが出来てしまって。でも時間をかけて作ったし、これをどうにか成功っていうことにできないだろうかと考えたときに『無駄づくり』という言葉をひらめきました」

これが、藤原さんの最初の作品で、発明品は段々と進化を遂げていきます。当初は段ボールなどを使っていましたが、独学で電子工作や3Dモデリングを学び、エンジニアリングについての本を書くまでになりました。

「技術力を身につけてすごいものを作るぞ、みたいな、そんな意識の高い感じではなくて……モーターを自分のタイミングで動かせたらもっと面白いものが作れるなぁ、と思って、調べてみたら『あ、自分でもできそう』みたいなノリ。料理と一緒です。カレーのルーを入れてみたらなんでもおいしくなるなぁ、ということを発見するみたいな感じ(笑)」

藤原 麻里菜さんイメージ
藤原 麻里菜さんイメージ
藤原 麻里菜さんイメージ

暇な時間を
いかに過ごすかが大事

藤原さんの発明の源になっているのが、「暇」。自宅と制作作業をするアトリエの間を片道30分歩いて往復したり、本を読んだり、電車に乗ったり、カフェに行ったり。景色を変えて新しい雰囲気に触れると新たな発想につながることもあるといいます。

心の負担になってしまうため、SNSも見ないようにスマホの通知をオフにし、ゆっくりした時間を作るようにしているとか。
「一度、体調を崩してしまったことがあって。忙しいことが格好いいと思っていた時期があったんです。ふんわりした『他人』のイメージがあって、それに気に入られなきゃ、という強迫観念があって。スマホの通知をオフにするだけで、だいぶ変わりました。より暇な時間につながっています」
暇があると潰したくなってしまうのが人間。ついついスマホに手を伸ばしてSNSを開いてしまいますが、藤原さんによるとSNSは「インプット地獄」。
暇な時間を、いろいろと物思いにふけったり、ものを作ったりするために使えるように意識の向け方を調整しているそうです。

藤原 麻里菜さんイメージ
藤原 麻里菜さんイメージ

「つまらない」と
感じるときにはどうする?

「私は語学が好きで、英語と中国語を学んでるんですけど、『何か目的があるの?』って聞かれると、そういうのはあまりないんです、て答えています。中国語の先生と意思疎通ができて、2人で『おお〜!』ってめっちゃ拍手したりとか、そういう瞬間が楽しい」

私たちは忙しい日常の中でやるべきことに追われ、「好き」を理由に楽しむ純粋な気持ちを忘れてしまっているかもしれません。藤原さんのように、何かを楽しむ感情を持ち続けるにはどうしたらいいのでしょうか?
「自分にとって価値のある情報を得ようとすると疲れてしまう。だから、ぜんぜん有用性のないことをやってみるのがオススメです。私も、体調を崩していた時期、やりたいことが思いつかなくて、いつも楽しかったNetflixを見る時間が急につまらなくなってしまったんです。そういう時に、たとえば『逆に一番つまらないNetflixのドラマを探してみよう』と考えてみる、とか」

すると、その行動そのものが楽しくなり、つまらない、と感じて塞いでいた気持ちが前向きになってくるそう。時間を有用性、価値と切り離して過ごしてみると、仕事や日常の中でも新しいアイディアが生まれることにもつながるかもしれません。

風が吹いても
揺らがない自分でいたい

「自分の発明品が世界を良くする、なんて壮大なことは思ってないんですけど、自分が『無駄づくり』をすることで、自分が見る世界はすごく良くなってるんです。だから、『無駄づくり』というアウトプットの場所はけっこう大切に守っています。昨日は全く思いもよらなかったものが、今日出来上がるのは嬉しい」

ゆったりした「暇」な時間の中で、自宅で一人で踊ってみたり、他の人には見せない自分しか知らない服を家の中で着てみたり、くらしを楽しむ藤原さん。もちろん、新しいアイディアが浮かんだり、発明品の設計について考えている時に最もわくわくするそうです。
「これから、やってみたいこと、目指していることはありますか?」と質問すると、少し考えて、「『これから』というか、今がすごい幸せなんですよね」と教えてくれました。
「たぶん、皆さん全然想像できないと思うんですけど、私、『あーほんと毎日幸せだな』って思いながら寝るんですよ(笑)。だから、この先も今の生活を守っていきたいな、と。どんなことが起きても、どんなに風が吹いても揺らがない自分でいたい。それが大切だな、と思います」

藤原 麻里菜さんイメージ