Interview
#07

〝ベンチャー出身の霞が関広報〟
人と人をつなぐ力と
社会貢献への想い
誰も傷つかない世界をつくりたい

西川 朋子さんTOMOKO NISHIKAWA

文部科学省 「トビタテ!留学JAPAN」
広報・マーケティングチームリーダー

1976年、札幌生まれ、鎌倉育ち。上智大学を卒業後、人材系ベンチャー、出版社にて企画営業に従事。29歳の時に、勤務先より事業の営業譲渡を受け新会社設立、代表取締役に就任。3年の経営経験を経て、マーケティング&PR会社で起業家を支援する「女性起業塾」事務局長兼カウンセラーに転身。PRプランナーとしても実績を積む。2014年より留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」の広報、2018年より文部科学省の広報戦略アドバイザーを務める。

多様な働き方の実現に注目が集まる今、転職やキャリアチェンジは珍しいものではなくなりました。現在、文部科学省の留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN」の広報を務める西川朋子さんは、現職までに4度の転職を経験し、会社の経営も経験しています。リスクを恐れず新しい挑戦を続けるために、西川さんが実践してきたこととは? これまでのお仕事や、それを支えてきた日々のくらしについてお話を伺いました。

グローバルなZ世代から
学びを得る日々

職業柄、10代〜20代の若者たちと交流する機会が多い西川さん。若い世代との関わりに関しては、「非常に刺激をもらって、勉強になります」と語ります。

「社会起業家やその卵のような子たちが多いので、みんな、とっても志が高くて。私のこれまでの仕事での経験を話したりしますが、少しでも彼ら、彼女らの役に立てたりするとやっぱり嬉しい。今はそれが大きな充実感につながっていますね」

「トビタテ!留学JAPAN」は2013年に文部科学省がスタートさせた事業。個人や法人からの寄付で若者の留学支援を行う「日本代表プログラム」を通じて、将来世界で活躍できるグローバル人材を育成しています。西川さんはその広報だけでなく、文部科学省全体の広報戦略アドバイザーも担っています。

「もともと公的な立場で働きたいという希望を持っていました。大学を卒業してから留学業界に10年ほどいて、またPRの世界でも学んできたので、そのすべてを活かせる現在の仕事はとてもやりがいがあります」

子どもの頃は国際公務員に憧れたという西川さん。文科省直下でグローバル人材を育て、社会貢献につながる現在の留学支援はまさに天職ですが、現職に辿り着くまでに4度の転職を経てきました。

西川 朋子さんイメージ

国際公務員を目指した
学生時代

「中学生くらいの時に、アフリカの難民の写真集を見たり、授業で戦争での虐殺の話などを学んだりして衝撃を受けました。同じ時代を生きているはずなのに、こういう状況にいる人たちがいる、というのは良くないという強い思いが湧いてきて」

大学では、数々の国連職員や外交官を輩出する学部に進学。しかし国際司法の最前線で活躍する教授のゼミで学ぶにつれ、徐々に無力感に苛まれるように。

「自分の想像以上に、社会は複雑にできているんだな、と気付いたんです。人間のエゴが複雑に絡み合っていて、シンプルな勧善懲悪のストーリーがあるわけではない。目指していた進路に自信が持てなくなりました」

大学時代には、実際に外交官や国際公務員になった多くの先輩たちの話を聞く機会もありましたが、そこで知った下積み期間の長さ、求められる緻密な事務処理能力にも驚いたといいます。

西川 朋子さんイメージ
西川 朋子さんイメージ
西川 朋子さんイメージ

「話を聞かせてください」と
飛び込む力

「子どもの頃から、テストの解答用紙に自分の名前を書き忘れるような人間です(笑)。緻密な事務処理能力なんて自信がなくて、自分には向いていないのかもしれない、と思いました。当時は、フィランソロピー、企業のCSR活動、といったキーワードが流行り、チェンジメーカー、社会起業家という存在も注目され始めていました。もしかしたら、私にはそうしたソーシャルベンチャー的な空気の方が合うのかも、と」

教育と人材をテーマにしたベンチャー企業に就職。その後、留学の経験を求めて本屋で情報を求めていたところ、見つけたのが『あの国でこれがやりたい!』というなんとも明快なタイトルの雑誌。ボランティアなども含めて、世界中の留学情報が掲載されたその誌面に感銘を受けたそう。
「雑誌の奥付の問い合わせ先に、『すごく面白い雑誌だと思うので何か話を聞かせてください』っていう、よくわからないアプローチをしまして(笑)。そこはベンチャー企業で、社長が対応してくださったのですが意気投合して、うちに来い、と」

この「話を聞かせてください」と飛び込む行動力こそが、西川さんの多様な職歴を支えました。以降、時には経営も経験しながら転職、キャリアチェンジを重ね、営業・PRの技術を磨いていくことに。20代、30代は「投資」という感覚で講演会やセミナーに積極的に参加。そしてその講師と仲良くなってさらに学びを乞い、人脈を築いていったとか。

西川 朋子さんイメージ

人は頼って、
頼られるもの

「趣味は旅とホームパーティ、っていうくらい、人と集まるのが好きなんです。コロナ前は〝西川といえば宴会幹事〟とよく言われました。人と人をつなぐ、潤滑油に徹するのが喜び。老若男女問わず、たくさんの人とご縁をつくりたいと思っていて」
こうした社交性は、業界や世代を超えて「横串」でつながることができる場を生み出す「一般社団法人ヨコグシ」の設立にも繋がりました。しかし、明るい性格を武器に多くの壁を乗り越えてきた西川さんも、理想の自分とのギャップに無力感やジレンマを覚えることは少なくない、といいます。
「寸暇を惜しんで社会課題解決に奔走する友人が多く、自分はまだまだ努力できていないなと感じます。でもあまりに自分を責めすぎてもQOL(クオリティ・オブ・ライフ)が下がってしまう。いかに自分を適度に甘やかし、かつ志を忘れないように、というところのバランスが大事なのかもしれません」
また、多忙な西川さんが心身の健康を保つために意識しているのが、「自己開示」をすること。弱い部分を出し、人と「頼って、頼られる」関係性を築くことが、お互いの信頼関係につながるとか。

「日本には、人に迷惑をかけるのはよくないという意識が浸透しているように思います。でも、迷惑をかける側は、人に人助けをするチャンスを与えているとも言い換えられる。そして、かけられる側の人は『徳を積んでる』と考えることもできますよね」

西川 朋子さんイメージ
西川 朋子さんイメージ

誰も傷つけない
ものを選びたい

日々、「トビタテ!留学JAPAN」の奨学生の若者たちと話す中で視野が広がり、社会貢献への意識の高さに刺激を受けるそう。また、西川さんは現在4匹の保護猫と暮らしていますが、その愛情を通じて動物福祉への関心も強まり、トレーサビリティというテーマにもっと向き合っていきたいという想いにもつながっています。
「誰も傷つけないものを選びたい、というのは強く思いますね。自然環境を破壊しない服、児童労働を排したエシカルジュエリー、鶏の健康を考慮した平飼い卵など。経済的な制約も出てきてしまいますが、とにかく自分のできる範囲で、できることをやろうと」

最近、オーガニックコットンのパジャマを購入し、袖を通した際、着心地だけでなく、それを身につけた時の精神的満足感も含めた心地よさに気付いたといいます。誰も犠牲にしない未来のために、もっとオープンで透明度の高い社会を目指したい、と語る西川さん。持ち前の行動力で、また新しいチャレンジをする姿が見られる日は近そうです。

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