Interview
#06

〝アロマブランドを立ち上げた
化学好きの高校生〟

まずは自分の目の前の人や
地域に貢献していきたい

髙橋 淳音さんATSUTO TAKAHASHI

高校3年生
アロマブランド「souveniraroma」ファウンダー
AEAJアロマテラピーインストラクター
AEAJアロマブレンドデザイナー

2003年神奈川県川崎市生まれ。税理士であり地域で音楽や武術などの振興に携わってきた父が新たに起業するタイミングで、自身も事業に参画してアロマブランドを立ち上げた。企画・商品開発を担当し、マーケットに出店するなどの際は接客も行う。現在高校3年生(2021年12月取材当時)で進学の準備もしており、高校生とブランド事業の二足のわらじを履く。
https://souveniraroma.stores.jp/

ふとした香りでリラックスできたり、昔の記憶が呼び覚まされたり、といった経験はありませんか? 普段は意識していなくて、香りはわたしたちのくらしを彩る大切な要素の一つ。髙橋淳音さんは、小学生の時、母の日にアロマディフューザーをプレゼントしたことをきっかけに、香りの世界に没頭。アロマテラピー検定1級などを取得し、2021年、高校2年生で「souveniraroma(スーベニアアロマ)」を立ち上げます。日々調合の研究を続けながら勉学にも励む、そんな忙しい日々の中で彼が描く夢とは。

小学生が
アロマに夢中に

「自分がプレゼントしたアロマディフューザーを、母が使ってない時にちょっと借りたんです。それを夜、枕元で焚いて寝たら、とっても寝つきが良くてびっくりしてしまって。なんでだろう? と研究していくうちに、いつの間にか夢中になっていました」

香りへの探究心はもとより、髙橋さんは子どもの頃から化学が大好きだったと言います。テレビドラマで硫化水素という毒ガスが登場し、それに興味を持っていると、薬剤師のお母さんが元素記号の周期表を見せて教えてくれたとか。そして中学1年生の時に毒物劇物取扱者試験に合格。理科の自由研究では、県から表彰されたり、コンクールで全国審査に進んだりしたことも。

そして高校2年生でアロマテラピー検定1級に合格。アロマテラピーアドバイザー、アロマブレンドデザイナー、アロマテラピーインストラクターとしても認定されています。アロマの業界人口は女性が圧倒的に多く、AEAJ(公益社団法人日本アロマ環境協会)の会員5万人のうち、男性はたったの約5パーセント。19歳以下となると、またさらに数は減ります。しかも、髙橋さんように化学的な観点も含めて興味を持つ人はかなりまれだとか。

髙橋 淳音さんイメージ

アロマ初心者にも
わかりやすく

「調合するときに、精油の成分を見て調合する人ってたぶんあんまりいないと思うんですけど、僕の場合は『この成分にはこういう効果、効能がある』ということを参考にしながらブレンドするようにしています」

アロマは医薬品ではないため、製品として効果効能を謳うことはできませんが、髙橋さんの調合は化学の知識と探究心によって支えられているようです。調合をしているご自宅の自室にお邪魔すると、本人曰く「僕の頭の中がそのまま机になってるみたい」というトライ&エラーの痕跡が。何を調合するか、だけでなく、何滴ずつ入れるかという細かなことでもガラリと香りの印象が変わるのがアロマ。嗅いだ時の感覚も日によって変わるため、その無限の可能性を目の前にするときに一番わくわくすると言います。また、他のブランドの研究にも余念がなく、壁の棚にはお気に入りのアロマや香水がずらり。
「まだアロマを手に取ったことがない若い人や男性に、その良さを伝えていけるブランドにしたいなと思ってるんです。香りって、嗅いで一瞬で気持ちが軽くなることがあるじゃないですか。ストレス社会だと言われる今、体調管理のツールの一つとして使っていただけたらな、と」

最近では、お父さんの知り合いの運送業者から相談をもらって、ドライバーの運転環境を改善するためのアロマオイル、車載用のディフューザー、マスクスプレーのセットを開発。パッケージの裏には、初心者でも使いやすいように図解で使用方法も記載しました。

髙橋 淳音さんイメージ
髙橋 淳音さんイメージ
髙橋 淳音さんイメージ

まずは目の前の
人への貢献を

そしてこの「セーフティドライバーセット」は、瓶詰めやラベル貼りといった仕事を、溝の口の福祉事業所に依頼しています。髙橋さんのお父さんは税理士として働きながら、音楽、武術の振興にも携わる中で地域とさまざまな繋がりを持っており、福祉事業所とのパートナーシップが実現したそうです。

「父が昔から『自分と関わってくれた人が、なんとなくいい方向に行けたらいいよね』と言っていて。それは自分の中でけっこう大事にしています。福祉事業所に依頼したのも、そういった気持ちからでした」
こうした社会貢献の観点でいうと、髙橋さんは学校でサステナビリティやSDGsについて学ぶ世代。学校には「SDGs部」があり、ミャンマーへの募金活動に励む友人たちもいるそう。

「でも、海の向こう側の問題などは今の自分にはまだピンとこなくて。自分一人でできることには限りがありますし、まずは目の前の人、自分の住んでいる場所で関わる人たちに貢献していきたいです。また、精油は今ほとんどが海外からの輸入になっていますが、国内だとラベンダー、柚子、ヒノキ、ヒバなどの精油があるので、そうした国産の原料も大切にしたいですね」

髙橋 淳音さんイメージ

ブランドを持つ
高校生の日常

ブランドを立ち上げ、調合など試作品作りで忙しい髙橋さんは、現役高校生でもあります。日中は学校に行き、帰ってきてから勉強。または、川崎市内の雑貨屋さんに商品の納品に行くことがあれば、納品先のお店で勉強をさせてもらうということもあるとか。高校2年生の時にコロナ禍が直撃した髙橋さんは、まさに従来の「学び」の常識がガラリと変わる瞬間に立ち会っています。

「経営学部などがいいのかと迷っていた時期もあったんですが、理系の夜間学部の存在を知って、今はそこを目指しています。コロナの影響もあって従来の『大学に通う』ということの価値も揺らいでいると思いますし、ビジネスの勉強をしながら化学の勉強をしたい僕にはぴったりだと思いました」
現役高校生が立ち上げたブランド、ということで様々なメディアからの取材も増えましたが、学校で「記事見たよ」と声をかけてくれる友人もいるそうです。
「僕は生徒会に入っていろいろ学校行事に絡んでいるので、変に目立つキャラとして定着してるっていうのはあるかも(笑)」

普通の高校生とは少し変わった経歴を持ちながらも、勉強はもとより学校のイベントにも積極的に関わっている髙橋さん。「友達へのリスペクトは忘れたくないなって思います」と教えてくれました。

髙橋 淳音さんイメージ

経営者になる
という夢

「自分はとても恵まれた環境で育ててもらったと思います。友人たちの中には、経済的な理由から、希望する進路を選べない、と言う子もいます。だから、自分がやりたいと思うことにチャレンジできるのって、当たり前のことじゃないんだなって思うんです」

まだ詳細な事業計画などを立てていくのはこれから、という段階だそうですが、やらせてもらっているからには事業を成長させて還元したい、と髙橋さんは語ります。そのために学ぶべきことはたくさんあると実感しています。
「今は、やっぱりモノの品質だけでブランドを差別化をするのは難しい。誰から買うか、ということが重要になってきているから、『人に伝える力』も同時に磨いていかないと」

また、お父さんの税理士としての仕事を見ていると、個人事業主、経営者に会う機会も多く、その人たちの生き方や考え方にも大きな影響を受けたとか。
「今は父が立ち上げた会社の中の一部門ですけど、いつかはもっと成長して、自分が経営者になれるように頑張りたいと思います」

髙橋 淳音さんイメージ