Interview
#03

〝ヴィーガンクッキー屋さん〟
おいしさで、
世界の環境・食料問題に
取り組みたい

溝渕 由樹さんYUKI MIZOBUCHI

株式会社ovgo 代表取締役
ovgo B.A.K.E.R Edo St.店 オーナー

1993年、東京都生まれ。大手商社に勤務し、法務関係の部署で働く。自分の仕事が誰かの役に立っていることを実感できる仕事がしたいと退社。ブラジルやアメリカを2カ月間旅して、環境問題や食糧問題を知る。帰国後、フードビジネスの基礎を学びたいと食品会社に勤務。2021年、小学校の同級生2名と大学の先輩1名と共に株式会社ovgoを設立。2021年6月に、東京・日本橋小伝馬町に路面店「ovgo B.A.K.E.R Edo St.店」をオープン。
https://lit.link/ovgobaker

「ヴィーガンだから仕方なく食べるのではなく、おいしいクッキーを食べたらヴィーガンだった」。そんなクッキーを作りたかったと話す、ovgo B.A.K.E.R(オブゴベイカー)の溝渕由樹さん。ヴィーガンとは完全菜食主義のことで、彼女の大好きなクッキーと、ヴィーガンを結びつけることによって、動物愛護はもちろんのこと、環境や食糧問題を軽減できることに気づき、取り組みを始めたと言います。そんな彼女の暮らし方や仕事感など、充実した毎日の様子を伺いました。

自分のやることが誰かの
役に立つことを実感したいと転職

溝渕さんたちの作るヴィーガンクッキーは、「これがヴィーガン?」と思うほど、しっとりとして、コクのある甘みと素材のおいしさが際立つスイーツ。ヴィーガン好きはもちろん、幅広くスイーツ好きの間でも人気沸騰中です。大きくてアメリカンなクッキーやマフィン、焼き菓子がお店にずらりと並んでいると、どれにしようかと、あれこれ迷ってしまいます。
こだわりのヴィーガンベーカリーブランド「ovgo B.A.K.E.R Edo St.」オーナーの溝渕由樹さんは、なぜヴィーガンクッキーに取り組んだのでしょう。

「はじめは、ヴィーガンクッキーを仕事にしようなんて、ちっとも思っていなかったんです。発展途上国の支援に興味があって商社に勤務しました。ですが、大きな組織だったので自分のやっていることが誰かの役に立っているという実感が、なかなか持てなかった。自分の好きなことや得意なことを考えたら、食べることやスイーツを作ることだったので、そういうことにも関わっていきたいなぁと思っていました」

それを叶えるべく、会社を辞めたタイミングで、いつか自分で何かを始めるためのネタを探したいと、2カ月間、ブラジルやアメリカを旅したと言います。
「そのときに、初めてヴィーガンやプラントベース(植物性)の焼き菓子と出会ったんです。健康に良いだけでなく、動物愛護の観点で食をとらえてみるとか、プラントベースの食品は環境負荷が低いことなどを知りました。たとえば畜産では、エサとなる穀物が多く必要で、もしも、その穀物を人間が食べればたくさんの人が飢餓から救われるということを知り、プラントベースは食糧問題とも密接につながっているんだって学んだのです」

ヴィーガンやプラントベースを選ぶという選択が体への影響だけでなく、もっと広い視野で人の役に立つことを実感したという溝渕さん。帰国後、自然な流れでヴィーガンのお菓子作りに取り組んでみたいと思えたそうです。

溝渕 由樹さんイメージ

手作りのヴィーガンクッキーが
完売した喜びを知る

クッキー好きな人たちが、気負わず「おいしい!」と思えるヴィーガンクッキーを作りたかったという溝渕さん。初めてフリーマーケットでヴィーガンクッキーを販売したことが、その後の人生に大きな影響を与えました。

「外国人が多いエリアで、ヴィーガンクッキーを売ったら喜んでもらえそうっていう軽い気持ちで挑戦しました。最初に、自分の好きなクッキーをヴィーガンにアレンジして作りましたが、卵を使わず、バターをほかの食材に置き換えたりして、楽しみながら試行錯誤をして作っていたら、すっごくおいしいクッキーができたんです。300円で販売したら完売して、自信につながりました。ヴィーガンクッキーだからヴィーガンの人だけが食べるのではなくて、『おいしいからこのクッキーを食べたい』って思ってもらうことが大切。そうでなければ続きませんから」

自分のできる範囲でヴィーガンやプラントベースの食生活に取り組めばいいと、溝渕さんは考えています。それは、持続することこそが大事だからです。

「365日ヴィーガンを頑張っている子たちは、すごくいい子たちばかりで、命のことを真剣に考えています。でも、世の中のみんなが、すぐにライフスタイルを変えるのは難しいことかと私は考えています。少しでも動物の命が救われたり、搾取されるものが減るようにと、みんなが自分のペースで始められたらいいなと」

溝渕 由樹さんイメージ
溝渕 由樹さんイメージ
溝渕 由樹さんイメージ

小学校の同級生だから
叶えられたこと

肩肘を張らず、無理をせず、自分たちができることで、その考えを広めていきたいと話す溝渕さん。ヴィーガンクッキー作りのことを語る彼女の笑顔は、とても充実しています。
そんな溝渕さんが全幅の信頼を置いているのは、小学校からの同級生2人。ヴィーガンクッキー作りに取り組みたいと考えたときも、その2人がいてくれたからこそ、一歩を踏み出せたと話します。

「私が言いだしっぺで、ヴィーガンクッキーを作って販売したいって声をかけたのです。もともと食べることが大好きな3人なので、みんなであれこれ相談しながらテストを重ねて、おいしいヴィーガンクッキーにたどり着きました。最初の頃は、全員が兼業だったのでとても大変で、一人だったらくじけてしまったかもしれないけど、自分で言った手前やらなきゃ…と(笑)。3人の同級生というチームで始められたことが、ここまでこられた理由だと思います。そして、このクッキーがあったから、いろんな人に出会えたり、助けてもらったりして、ヴィーガンの世界が広がったんです」

溝渕 由樹さんイメージ

環境に良いことを少しずつでも
HAPPYに続けていきたい

楽しそうに仕事のこと、環境のことを話す溝渕さん。きっと日常生活にも楽しいことが溢れていそうです。

「仲間たちとおいしいヴィーガンクッキーを作ることが楽しくて、仕事というより生活の一部になっています。自分の作ったものが形になって、お客さんの元に届いて、おいしいって食べてもらえたら、シンプルだけどそれが一番楽しいし、うれしいです。かわいいとか、おいしいとか、楽しいが、自分にとって良いだけでなく、みんなにとって良いことにつながればいいなと。さまざまなアクションが広がるきっかけを、常にovgoが提供していけたらいいですね」

ヴィーガンやプラントベースを世の中にもっと広めたいという溝渕さんの願い。これから、どんなことを目指していくのでしょうか。

「私たちはこれからも、植物性のおいしいものをどんどん増やしていって、環境負荷のこととか、やさしいライフスタイルを、多くの人に知ってもらいたいと思っています。それぞれができる範囲で、少しずつでも生活に取り入れてもらいたいですね。まずは小さくても長く続けること、それをできるだけ多くの人たちとやり続けることで、大きな広がりにつながります。そうやって地球の環境づくりを、大好きな同級生の仲間やスタッフと一緒にお手伝いしていけたらいいなって思っています。私は、スタッフがHAPPYに働けているかをいつも気にかけているんです。自分がHAPPYなら、お客さまにもHAPPYに接してくれますから、周りがやさしさに包まれますよね。そんなお店であり続けたい。もうひとつ、私の個人的な夢は、ニューヨークにお店をオープンすること。全然急いではいないので、焦らず、ゆっくり目指していきたいですね」

溝渕 由樹さんイメージ
溝渕 由樹さんイメージ